【小豆島】絶景の寒霞渓や虫送りは、映画「八日目の蝉」のロケ地! 〜小豆島上陸のんびり編〜
先日第88回選抜高校野球大会(2016年3月20日開幕、甲子園)の21世紀枠の各地区候補9校のうち、四国の公立・小豆島高校(香川)が選ばれたニュースを目にし、僕は3年前に訪れた小豆島を思い出した。そして「東京から小豆島への、ちょっと変わった行き方」(2012年7月版)を先日記事にしたが、今回はその続編となる小豆島上陸編だ。
前回の東京から小豆島への旅はコチラ!
朝の7時半、小豆島の坂手港に降り立った僕の行き先は特になかった。旅の目的が曖昧だったが、島の名産オリーブの木だけは見ておきたかった。ネットで調べてみると坂手港より西の位置に「オリーブ公園」の文字を見つけた。僕はとりあえずそこを目指し、島内を走るバス「小豆島オリーブバス」に乗ってみることにした。
◇小豆島オリーブバス株式会社HPより
小豆島オリーブバス|路線バス乗り継ぎコース
小豆島ではかつて路線バスが運行していたが、一般路線バスの事業撤退に伴い、2009年に地元が出資をし、小豆島オリーブバスが誕生した。
オリーブ公園を目指していたが、車内から見えた海に引きこまれてしまい、一歩手前の「草壁港」で下車してしまった。
バス料金:坂手港→草壁港 290円
瀬戸の海は雲がかかり、幻想的な雰囲気だ。表現が良いか悪いか、まるで死後の世界を見ているようだ。
オリーブ公園が近い、オリーブビーチまで来た。見渡すとやはりここも死後の世界。穏やかな瀬戸内海がそう思わせるのだろうか。それとも小豆島八十八ヶ所の礼所がそう思わせるのか分からないが、心が落ち着くのは間違いなかった。
海とは反対の山を見渡せば、無数の鳥たちが鳴いている。朝のBGMはこれだけでよかった。テレビやラジオの音はいらない。ノイズがない朝がこんなにも気持ちのいいことなのかと。
僕は自然の緑の色がとても好きだ。特に新緑の季節が好きで、東京近郊だと奥多摩の緑には物凄いパワーを感じる。だから毎年秋が辛い。紅葉を素敵に思える日はいつか来るのだろうか。
山を少し登ってみた。気がつけばこの一帯は、見渡す限りオリーブの木で埋め尽くされている。オリーブの葉の色は深い緑色ではなく、白みがかっている。
オリーブ公園内には風車があった。風車といえばギリシャを想像するが、それもそのはずで、この風車は小豆島と姉妹関係にあるギリシャのミロス島から贈られたそうだ。
隣接するオリーブ園は明治時代、日本で初めてオリーブの栽培に成功したオリーブ園なんだとか。
園内は見渡す限りオリーブ一色。雨で濡れたオリーブの葉が艶っぽく美しい。
オリーブ園を後にし再びバスに乗車すると、寒霞渓ロープウェイの乗り場まで来た。これから約5分空の旅を楽しみ、寒霞渓の山頂まで行く。
ロープウェイ料金:1,350円(大人・往復)
小豆島の観光なら寒霞渓ロープウェイへ/日本三大渓谷美「国立公園 寒霞渓」- 小豆島観光
国立公園の寒霞渓は日本三大渓谷美のひとつと言われており、日本で唯一「空・海・渓谷」を一度に展望できる島のロープウェイ。特に紅葉のシーズンは多くの人出で賑わうそうだ。
山頂に目をやれば、むき出しの岩肌と深い緑に力強さを感じる。旅における移動手段で、バス、列車、船は気分を盛り上げる三大移動手段だと思っているが、ロープウェイも悪くない。
寒霞渓の山頂に来た。標高は612メートルで、東京の高尾山(599メートル)より少し高い程度だ。
僕が小豆島で見たい景色のひとつに寒霞渓があった。それは角田光代原作の映画「八日目の蝉」のなかのシーン。不倫相手の子どもを誘拐した希和子(永作博美)が、その子どもと寒霞渓の山頂で会話をしているシーンを見てからだった。女性の強さと寂しさが滲みでた演技と、美しい瀬戸内海の景色に魅せられた。僕はこの場所に約2時間ほど釘付けにされてしまい、それほど飽きがこなかった。もちろん、持参した缶ビールを片手に。
寒霞渓を後にすると土庄港にやってきた。港の側におみやげ屋があり、その中で遅い昼食をとることにした。
それはそうめんだ。日本で三大そうめんと呼ばれているのが「損保乃糸」「三輪そうめん」そして「小豆島そうめん」なんだそう。小豆島はオリーブだけではなく、そうめんの産地としても有名らしく、島内には約200軒あまりのそうめん製麺所がある。
僕はそれまでそうめんをあまり好んで食べなかった。その理由は特に無いが、麺類を食べる時はラーメンに心がなびいていたのだろう。でも、小豆島のそうめんを食べてから思いは変わった。その歯応えのある食感はどことなくうどんに似ていて、食べていて楽しかったのだ。東京に帰ってもそうめんを食べようと思ったが、考えたら「そうめん屋」というものが存在しない。東京でそうめんは家で食べる習慣がある。
夜は肥土山の虫送りへ足を運んだ。虫送りとは古くから伝わる田んぼの稲虫退治の行事のことで、夕暮れどきのあぜ道に火手をかざしながら「稲虫来るな〜」と声を出しながら歩く。
この虫送りの行事は肥土山で1回、中山の千枚田で1回の計2回、毎年7月上旬に行われる。僕が見たのは肥土山の行事だったが、映画「八日目の蝉」のシーンに出てきた虫送りのシーンは中山の千枚田の方で、おそらくそちらの方が千枚田の景色も相まって見応えがあると思う。
小豆島の夜は寂しい。土庄で唯一栄えているショッピングモールもご覧の通り。これでは若い人は島を出ていくんだろうと思ってしまう。僕は隣接する「オリーブ温泉」に入ったが、そこも人はほとんどいなくほぼ貸し切り状態だった。
夕飯は地元の居酒屋のカウンターで食べた。食事は美味しかったが、沖縄にいるときのような高揚感がない。同じ島でもこうも違うものか。
宿泊先は土庄港のすぐ近くの「ビジネス民宿 マルセ」を選んだ。マルセは本館と新館があり、僕が泊まったのは2011年にオープンした新館の方だ。
近年東南アジアのゲストハウスしか知らなかったが、日本の民宿といえば本来この姿。畳に布団、小さなポットに丸い茶碗入れ。そして小さなテレビが角にある。この民宿は新築だから清潔感が売りだ。そしてスタッフも良い人だった。まさに島の人といった感じだ。
僕は民宿が結構好きなんだが、1人で泊まり、尚且つ狭い部屋だと、どことなく出稼ぎ労働者のような雰囲気もしなくはない。やはり1人旅ならゲストハウスかベッドスタイルの宿の方がいいな。
ビジネス民宿 マルセ(新館)
住所:香川県小豆郡土庄町甲5165-293
設備:全室無料インターネット接続、バス・トイレ(ウォシュレット付き)、タオル、シャンプー、ボディシャンプー、朝食パン&飲み物無料
料金:4,180円(素泊まり)
翌朝は小豆島を離れ、高松へ移動する。移動手段はフェリーだ。小豆島と高松を結ぶフェリーはジャンボフェリー、四国フェリー、内海フェリーと数が多い。それらは互いの地域の貴重な足となっており、フェリーで通勤する人も多いらしい。そのなかで僕が乗船したのは四国フェリーで運賃は690円だった。
「さらば!小豆島!!」
船の甲板で瀬戸内海の風を感じる朝は格別だ。
乗船時間は約1時間。四国の香川県高松に着いた。僕自身四国への上陸は初めての体験だった。
◇高松駅構内
小豆島から移動すると高松は一気に都会の景色に変わる。
高松中央商店街に来た。地方でよく見るのが大型のアーケード街だ。東京でも武蔵小山商店街、十条銀座商店街、ハッピーロード大山商店街など大型のアーケードはあるが、地方はなんたって道幅が広い。この光景がとても気持ちがいいのだ。そして、ここ高松中央商店街のアーケードは総延長が2.7kmあり、総延長では日本一のアーケードだ。
◇夜は栄えるのだろう。酒場の看板がズラリ
◇中央通り沿いにある中央公園。色とりどりの花が咲き誇る
突然だが、香川県といえばうどんだ。うどんを食べるために高松へ移動してきたと言っても過言ではない。「よし!うどんを食べよう!!」
数あるうどん店のなかで、僕が選んだのは高松市役所の向かいにある「森製麺所」だ。ここを選んだ理由は、近くに香川県庁もあり、役所で働く人の数と訪れる人が多い場所で構えている店は、美味いんじゃないかという発想で来てみた。
注文した品はかけうどん・小(220円)と、小海老のかき揚げ(130円)だ。まず注目したのはつゆだ。東京で食べるうどんのつゆは濃い色をしてしょっぱいが、香川のうどんは薄い上品な色をしている。いわゆる関西系のつゆだ。それでいて味はしっかりしていて、ダシが効いている。麺は食感がしっかりあり、太さもちょうどいい。
小海老のかき揚げは小海老とは思えないほど大きな海老だ。そして海老の風味がとてもよく、玉ねぎの甘みとマッチする。そして僕は海老が好きだ。
東京でうどん専門店は多くない。うどんを食べようと思ったら、大手チェーン店か、蕎麦と一緒に提供している店しかないのだ。得意のLCCを駆使して「香川ちょっと一杯うどんの旅」も悪くはないか。
森製麺所
住所:香川県高松市番町1-10-49
料金:かけうどん・小(220円) 小海老のかき揚げ(130円)
遍路83番礼所「一宮寺」へも訪れた。この寺は、悪人が頭を入れると抜けなくなるという「地獄の釜」で有名な寺だ。ということは善人は抜けるのか。僕は決して悪人ではないと思っているが、怖いので試さなかったのは言うまでもない。
◇仏生山温泉(画像:仏生山温泉HPより)
高松滞在のシメは温泉にした。僕が訪れたのは琴電琴平線「仏生山駅」から近い仏生山温泉だ。この温泉の魅力はなんといっても美術館のような内・外観だろう。浴槽はヒノキとヒバを使用しており、脱衣所と浴場には境目がない開放感がある造りだ。温泉好きはもちろんのこと、建築に興味がある人は訪れることをお薦めする。
それにしても旅に温泉はつきもので、これが国内だとより一層温泉が占める割合は濃くなる。その当時は何とも思わなかったが、最近の僕は「美味い飯を食べて、温泉入って……あ〜、贅沢」みたいな旅は興味がなくなってきた。近所の隠れた大衆酒場に、風呂は入りたければ銭湯でいい。あぁ、これはいかん。国内のまた違った旅のスタイルを見つけなければいけない。
仏生山温泉
住所:香川県高松市仏生山町乙114-5
営業時間:平日11時〜24時、土日祝9時〜24時
定休日:毎月第4火曜日
料金:大人600円(中学生以上)、小人300円(3歳以上)
温泉を楽しむと帰京するため高松空港へ来た。高松空港から利用した航空会社は大手の航空会社だ。片道で1万円弱した記憶がある。これがジェットスターのセールなら2,990円で行けたりするものだから嬉しい時代になったものだ。「香川ちょっと一杯うどんの旅」も現実味が帯びるのではなかろうか。
航空会社のホームページとにらめっこをしながら旅の行程を考える。実はこのときが一番至福の時間だったりする。それでもやはり旅はしてみるもんだ。今度の国内はどこに行こうかな。またパソコンと向き合う時間が増えそうだ。
おわり
※この記事は今から3年前、2012年7月に筆者が旅した記事です
るるぶ香川 高松 琴平 直島 小豆島’16 (るるぶ情報版(国内))
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