子どもの頃に描いたWe Are The World と地球が成功する可能性の世界 〜バンコク・エラワン廟から〜

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2015.12.28


ドンムアン空港を出るとBTSモーチット駅へ向かうA1のバスに乗車した。運賃は30Bで、バスが出発したあとに車内にいる車掌へ支払った。このA1のバスは最近よく利用するのだが、どういうわけか次の停留所の空港前の路上から乗車する人が多い。旅情を味わうなら、バス停の前を走る激しい車の往来を肌に感じ、「あぁバンコクに来たな」と余韻に浸ることもできる。しかし、始発から乗車した方が席に座ることができるので、旅情よりも楽をとってしまう。

バスが終点のBTSモーチット駅に着くと、冷房が効いた車内とは打って変わり、外は灼熱の太陽が照りそそぐ。僕は長袖のシャツを脱ぎ、ついでに靴から持参したサンダルへ履き替えると少し身軽になった気がした。

高架への階段を昇り乗車カードを購入するとホームで待つBTSに駆け込んだ。向かった場所はチットロム駅だった。チットロムはサイアム周辺から続く一大ショッピングエリアで、日系デパートの伊勢丹があるセントラルワールドや、タイとベトナムで展開する巨大スーパーマーケットのBIG Cなどがある。特にセントラルワールドではこのシーズン、巨大なイルミネーションのセットを組んでおり、夜は物凄い人で溢れている光景を僕はこの旅の最中何度か見た。そんな賑わいを見せるセントラルワールドの斜め向かいに、2015年8月に死者20人、負傷者120人以上という凄惨な爆発テロ事件が起きた現場がある。ヒンズー教の祠、「エラワン廟」だ。

 

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爆発テロ事件の振り返り

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事件を振り返ってみたい。2015年8月17日午後6時55分、ラチャプラソン交差点角にある「エラワン廟」前付近で爆発事件が発生した。タイ警察はこの爆発事件をテロと断定。幾つかの犯人像が浮かぶなか、ひとつの説が具体的となった。

エラワン廟はヒンズー教の寺院で、タイでは最もご利益がある場所として知られるパワースポットだ。そんなエラワン廟は中国人観光客の人気が高いため、ウイグル族による中国人とタイへの復讐が犯人の目的ではないかという説だった。その説の背景には同年7月、タイ暫定政権が中国新疆ウイグル自治区から逃れて来たウイグル族の一部100人以上を中国に送還したことからだった。

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そんな説を嘲笑うかのように、翌18日午後1時頃にBTSサパーンタクシン駅前にあるサトーン船着場で第2の爆発テロ事件が起きた。こちらは水面で爆発しただけで、幸いにも死者、負傷者は出なかった。しかし、一歩間違えれば大惨事だった。サトーン船着場はチャオプラヤー川を行き来する水上交通の主要船着場で、バンコクの新スポット、アジアティーク・ザ・リバーフロントや、王宮、カオサン通りなどへ行くことができ、中国人だけではなく、連日多くの諸外国観光客で賑わっている場所だ。そこで実行された第2の爆発テロ事件。考えただけでも恐ろしい。

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◇サトーン船着場で起きた第2の爆発現場

犯人と思われる人物はいち早く浮上していた。その人物はエラワン廟前に設置された防犯カメラに映る黄色のTシャツを着た実行犯の男。タイ警察はその男と10人前後の外国人、タイ人グループによる犯行とみて、100万バーツの懸賞金をかけて行方を追うこととなった。そして事件発生から12日後の8月29日、バンコク・ノンチョークのアパートで実行犯、アデム・カラダグ容疑者を逮捕した。アデム・カラダグ容疑者の国籍は不明だがトルコの偽造パスポートを所持しており、少なくとも11冊のトルコパスポートや爆弾の製造に必要な材料がアパートから発見された。

さらに9月1日、犯人の男、ミーライリー・ユスフ容疑者をカンボジアとの国境で新たに逮捕した。ミーライリー・ユスフ容疑者はウイグル出身と記されたパスポートを持参し、国境沿いの森の中を歩いているところを警備中の兵士に捕らえられた。供述によると、爆弾を作りバンコク中央駅で実行犯に手渡した。

さらに逮捕劇は続く。9月14日、今回のテロ事件に関与したマレーシア人2人と、パキスタン人1人を逮捕したことがマレーシア警察より発表された。ここまでが事件の全貌だ。

その他の犯行説

 

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ウイグル族過激派による犯行が濃厚な説だが、一方で現軍事政権に難色を示すタクシン派が事件に関与している説もある。事件前日の8月16日、タイ法務省がタクシン元首相の警察官時代の階級を剥奪したことによりタクシン支持者が大激怒。SNS等に「14日から18日の間は気をつけることだ」と、犯行予告ととれる書き込みをしていた。しかし、タクシン元首相は関与を否定。


また、タイ南部の分離独立運動を進めるイスラム組織の犯行説もあった。過去タイで発生するテロといえば大半は南部で発生していた。しかし今回のテロとの関与は薄いとされている。

 

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事件のその後


事件から4ヶ月が過ぎた。ここまでの情報は報道で得たものばかりで周知された内容だ。しかし、日本においてその後の情報が掴めず全貌が分からない。もう自ら取材に出向かなければならないと思うほどで気味が悪いのだ。そして気味が悪いといえば12月上旬に出た報道もそうだった。

タイ警察は過激派組織イスラム国(IS)と繋がりのあるシリア人10人が、2015年10月にタイへ入国していることを明かした。さらに入国した10人は、タイにあるロシアの関係施設を報復の攻撃する可能性があると発表したのだった。


これはロシアによるISへの空爆が背景にあると見られるが、なぜタイなのかという疑問をもつ人も少なくないだろう。それは今ロシア人にとってタイは人気な南国なんだそうで、2014年には160万人のロシア人がタイへ訪れ、日本人の120万人よりも多い。そのロシア人の多くはパタヤかプーケットを目指すらしく、寒い母国を忘れて常夏のビーチでバカンスを楽しむ。ISはロシア人への報復と共に、タイへの観光業へも打撃を与えるつもりなのだろうか。

 

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エラワン廟は日常を取り戻していた。しかし歩道には、爆発によって破壊された街灯の跡だろうか。そんな光景も見受けられた


そして2016年がはじまる


幸い今回のバンコク滞在中、そして記事を執筆中の現在も
タイでISが関与するテロ事件は起きていない。しかしながら他国を見れば、年が明けた2016年早々にもトルコ最大の都市、イスタンブールでISが関与したと見られる爆発テロが起き、10人が死亡、15人が負傷した。

僕は子どもの頃、きっと世界は平和になるんだろうと思っていた。そこに根拠や宗教観などはなく、単なる子どもの考えで「 We Are The World」の世界を描いていた。その後高校生になり、同級生と5人組のロックバンドを結成した。周りのバンドがカバー曲を練習するなか、生意気にもオリジナル作品の道を選んだ。僕の楽器担当はベースだったが、十数曲ある作品の一部で歌詞も書いた。その歌詞の一部で「地球が成功する可能性はゼロ」という歌詞を書いたことがあった。歌詞の全体像は世の中の不条理なことと、反戦のメッセージを皮肉に書いたものだった。愛だ、友情だという言葉に敏感な世代に、可愛くない歌詞を書いたと思っている。

昨今のISを巡るテロ事件。モノをいえば一筋縄ではいかない。アメリカ、ロシア、フランス、トルコ、サウジアラビア、シリアのアサド政権、シリア反体制派などの各勢力の思惑が別々に動いていて複雑すぎる背景がある。エラワン廟で発生したテロ事件とISの関係性はないが、テロという括りで見ればその思いも複雑だ。

地球が成功する可能性はゼロ」と書いたときから僕はだいぶ歳を重ねてしまった。しかし、その間の世界情勢を見ていると、高校生の時に書いた歌詞は皮肉な表現とは裏腹に、あながち間違っていなかったようだ。その歌詞の意味、理由はここでは省略させてもらうが、今もなおその思いはもっている。でも、子どもの頃に描いた「 We Are The World」の世界がたとえ叶わなくたって、心のどこかで描く自分がいたっていい。今年はどんな年になるのだろう。なるべくなら涙は少ない方がいい。

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