下川裕治さんの新刊『週末ちょっとディープなベトナム旅』レビュー

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旅行作家の下川裕治さんの新刊『週末ちょっとディープなベトナム旅』が、朝日新聞出版より2018年3月に発売された。

 

週末ちょっとディープなベトナム旅 (朝日文庫)

週末ちょっとディープなベトナム旅 (朝日文庫)

 


下川さんのベトナム本といえば、2014年3月に発売された、『週末ベトナムでちょっと一服』を思い出す。その著書のなかで、首都ハノイとホーチミンを中心に、ベトナムの魅力を紹介してくれた。そして実際にベトナムの風を感じに旅に出たことを思い出した。

あれから四年の月日が流れた。週末ベトナムシリーズ続編ともいえる下川さんの新作が読めるとは、自分の旅と重ね合わせ、感慨深いものがある。

今回は遅ればせながら、レビューをお届けしたい。

 

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第一章:ハノイ

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その下川さん、ハノイのロンビエン橋で起こった、20年前のトラブルを振り返るところから第一章がスタートする。その内容はネタバレになるので差し控えるが、自身の体験談を交え、ベトナムという国を紹介するところは流石。本のなかへすっと入り込んでゆく。


第二章:フォー

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第二章ではベトナムの代表的な料理のフォーについて解説しているが、これがまた詳しくページを割いている。2017年2月に発売された『週末ちょっとディープなタイ旅』でも、タイ料理とタイ中華料理について詳しく述べられていたが、週末シリーズのタイトルにディープがついてから、料理についての記述が文字通り、ディープになった気がする。

そのなかで気になったことがひとつある。それは、下川さんがホーチミンでよく行くフォー屋が、24時間営業のチェーン店のフォー24ということである。

ホーチミンを旅する日本人のほとんどが足を運ぶ人気チェーン店に、普通の旅行者とはちょっと違う思考の下川さんが足を運ぶとは……。

でも、下川さんは香港でもよく足を運ぶのは茶餐廳(チャーチャンテン)だし、単に面倒くさいだけなのかもしれない。

そんな下川さん、今回は知人に連れられて、フォークインにも足を運んでいる。フォークインは記憶が正しければ、誰かのブログで火がついた人気店だ。数あるメニューのなかで、シチューのフォーは誰もが口にするといっても大げさではない。

僕も現地で知り合った日本人に連れられフォークインへ行ったことがあるが、最初にフォーを口にしたのは、名もなき店だった。ローカルにこだわりすぎて民家の路地裏で口にしたフォーは魚が入った生臭いフォー。それがトラウマになり、ベトナムの麺料理を口にすることはなかったが、ブンと出会って目が覚めた。

確か下川さんも自身のトークショーで、これからはブンだみたいなことを言っていたのを記憶する。

第三章:デタム界隈

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第三章では、バックパッカーが集うデタム通りとファングーラオ通りや、その界隈についてを伝えている。下川さんはその界隈を、かつてのカオサンと言う。

カオサンとはタイのバンコクにあるバックパッカー街である。誰が言い始めたか知らないが、バックパッカーの聖地と呼ぶ人もいる。おそらく世界中のバックパッカーが多く集うところから、そう呼ばれるのかと思う。

そのくらい今のデタムはエネルギッシュということ。僕が最後に訪れたのは二年前だが、確かに頷ける街の喧騒だった。それでもブイビエン通り名物の歩道に敷き詰めたゴザの姿は、今や体験できない。綺麗に並んだテーブルで飲むビールは、旅の高揚感が湧かず、そそくさと宿へ帰った記憶を想いだした。

下川さんはそんな街を嫌いではないと記述しているが、ほんとは嫌いだと思う。行く意味がないとまでいいそうな気がする。

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第四章と五章:ダラットとダラット高原

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今回の作品のメインはダラットとダラット高原についての第四章と五章だと思う。作品のなかにも記述があるが、ダラットは第一世界大戦のころ、フランスがつくった避暑地。静かで涼しいダラットの街は、下川さん好みの街のような気がする。

そのなかでダラットに六年暮らす松尾さんの話しが出てくるが、これがまた興味深い。内容は割愛させてもらうが、現地の人の話しが随所に出てくるのが、今作品の特徴といえる。

第六章から八章

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第六章から内容は、なぜかベトナムからカンボジアへ移っていく。ベトナムだけでは完結できなかったのだろうか。疑問が残るが、三章に渡って読み応えのある内容だった。特に工業団地のくだりは、まさに取材旅行。普通の旅行者には耳にできない内容で、勉強になった。

感想

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確か『週末ベトナムでちょっと一服』の記述だと思う。下川さん曰く、東南アジアを旅するときに、タイの流儀を経験すると、他の国が旅しやすいみたいなことをいっていたと思う。でも、ベトナムだけはその流儀が当てはまらないともいっていた。

それはなんだろう。僕も頷ける部分があった。一番はタイとは比較にならないエネルギッシュなところだと思う。それは露骨なボッタクリなところも、そう思わせてくれるのかもしれない。それが好きか嫌いかで、ベトナムを旅することが好き嫌いの別れるところかもしれない。

と、ここまでが普通の旅行者の感覚で、その感覚でダラットはおすすめできるということなのか。僕は行ったことはないが、旅好きの友人からは耳にする街だから、そのとおりなんだろう。

それが旅狂いの友人になると、ハノイやホーチミンの街は口に出ず、ハジャンの絶景がいいなどと言い出す。そうなるともう旅から抜け出せなくなるというものなのか。

これからベトナムを初めて旅する人は、『週末ベトナムでちょっと一服』を読んでから、新刊の『週末ちょっとディープなベトナム旅』を読むとしっくりくる。そしてベトナムへ行きたい気持ちを、きっと抑えられなくなる。

あぁ、僕もベトナムへ行きたくなってきた。
今夜の食事はフォーにしよう。

 

週末ちょっとディープなベトナム旅 (朝日文庫)

週末ちょっとディープなベトナム旅 (朝日文庫)

 
週末ベトナムでちょっと一服 (朝日文庫)

週末ベトナムでちょっと一服 (朝日文庫)

 

 

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