行き場を失った成田難民は、怪しい八重洲界隈を寒空の下彷徨う
沖縄滞在:2015.11.27〜30
僕が今回利用した航空会社はLCCのジェットスター。今年の4月に成田のチェックインカウンターを従来の第2ターミナルから、LCC専用として新設された第3ターミナルへ移動したことは記憶に新しい。この第3ターミナルの評判がすこぶる悪く、「もの凄く歩く!」と聞かされていた。ところが蓋を開けてみるとそんなことはなく拍子抜け。東京駅間をバス利用すればなんてことはないことが分かったので、その辺りも含めて今回の記事としたい。
■成田⇄沖縄の航空券購入
購入したのは今年の8月。「女ともだちに、会いにいくよ。」セールだった。往路の成田から沖縄までの片道料金は1,990円。破格といえる料金設定だった。その後毎月「会いに行くよ。セール」は開催されるものの、2千円を切るセールはない。一方、復路の沖縄から成田への航空券は、日にちを悩んでしまい購入をもたつく間に最安価格を逃してしまう。それでも諸税込みで往復9,300円という1万円を切ることに成功。気軽にちょっと一杯飲みに行くことが実現できた。ちなみに沖縄に女ともだちはいなく、誰に会いに行くわけでもない旅となる。
◇往路:11月27日(金)GK301 Airbus A320 成田6:00→沖縄9:10
◇復路:11月30日(月)GK308 Airbus A320 沖縄19:25→成田21:45
■寒空の下、彷徨う成田難民
旅の始まりは夜中の東京駅。深夜バスで成田空港へ向かうためだ。11月下旬の東京は寒い。これだからLCCのセール航空券は困る。分かっていながら購入してしまうのが悩みのタネだ。
クリスマスを意識したイルミネーションだろうか。ブルーのライトが余計に寒々しく見える。日付は変わって金曜日だが、木曜日の夜遅い東京八重洲口の人通りはこんなもんなんだろうか。
一歩裏路地へ周るとネオンが目立つ通りへ出る。すると多くの若い女性が寒空の下に立っている。
「お兄さん、マッサージ…」
辿々しい声の主は中国人。
「八重洲周辺は昔からこんなんだっけ?」
記憶が蘇らない。近くの雑居ビルでは看板のない店舗に入っていく、酔ったスーツ姿のサラリーマンが数人見える。怪しげなお店だ。ここはまるで東南アジア。
暖をとろうと八重洲口のマクドナルドへ向かった。しかしビル全体が工事用の幕で覆われて看板もない。僕は近くの交番に訪ねてみた。
「ここのマックはどうしちゃったんですか?」
「10月一杯で閉店しましたよ」
なんてことだ。成田空港行きの深夜バスに乗車する多くの人が利用するマクドナルド。アテが外れた。
「じゃあ、成田難民はいまどこに移動したんですか?」
「どうやら八丁堀のファミレスにいるみたいですよ」
八丁堀は八重洲口から徒歩で約10分。その界隈にロイヤルホスト、デニーズ、ジョナサンなどのファミレスは確かに存在する。しかし、僕は近くのコンビニで缶ビールを飲むことにした。嫌いじゃないが、貧乏くさい。これがタイならバスターミナルには必ず食堂か屋台がある。そこで食べる食事は旅がより一層盛り上がる。日本はつまらない。
そういえばこの一帯は今後再開発が行われ、地下に総面積2万平方メートルに及ぶ巨大バスターミナルが作られるそうだ。東京駅と羽田・成田の両空港や地方都市を結ぶ高速バスの発着地点。その時には食堂や屋台などが並んでほしいものだが、タイのようにはいかないだろう。おそらくクアラルンプールのTBSのようなターミナルだろうか。
寒空の下、行き場を失った旅人は、深夜の八重洲周辺をジプシーのごとく彷徨う。
1時30分発の京成バスが到着。事前予約をしていなかったが、なんとか乗車できる模様。料金は予約済みで900円。未予約の場合は1,000円と思っていた。しかし、提示された料金は倍の2,000円。ついに東京でもボッタクリが始まったかと思ったが、深夜料金は2,000円なんだとか。これなら早い時間に空港へ向かって、寝る場所でも確保すればよかったと思ったがあとの祭り。成田まで2,000円で、沖縄まで1,990円とは訳の分からない世の中である。
しかも前の席に座る中国人の男女が、リクライニング全開に倒し足を挟まれる。こんなところでも存在感を増す中国人。恐るべし。
渋滞もなく約1時間後に成田空港へ到着。しかも深夜は初めに第3ターミナルに着く。僕みたいな利用者のためだろう。京成バスの時刻表を見ればすぐに分かることだが、何も調べていなかったので、この事実は嬉しい限りだ。
バス停の目の前が第3ターミナル。ちなみに同じ停留所から東京駅行きのバスが出ているので、帰りもここから乗車することにした。
「これ、どこが歩くんだ?」
■第3ターミナルは職質が待っている?
ターミナル内に入るとチェジュ航空や春秋航空のカウンターが見えた。そして床には噂の陸上トラック。走る人はいない。
さらに歩くとジェットスターのチェックインカウンターが見えた。僕はWEBでチェックイン済み。さらに搭乗券はプリントアウト済み。手荷物の預けもないので、カウンターには用事がなかった。
◇24時間フル稼働のローソン
◇ATMもあるので安心。外貨両替ショップは閉店中
ATMの写真を撮っているときだった。
「あの〜、すいません」
振り返るとそこには2名の若いジャパニーズポリスの姿があった。
「いまATMの写真撮っていたのでお声かけさせてもらいました」
ATMの写真を撮って何が悪い。空港にATMや外貨両替所があるかないかは大事なことだ。その後、身分証の提示を求められ、名前や住所のメモをとるポリス。
「よろしかったら携帯の電話番号や職場の電話番号を教えてもらえないでしょうか」
「いや〜、断ります」
「あっ、それなら全然いいんで」
随分、あっさりと引き下がるポリスに拍子抜け。
「どちらへ行かれるんですか?」
「沖縄です」
「沖縄はいま暖かいですかね?」
雑談を交えて身辺調査。ポリスのオーソドックスな技だ。それならばいい機会だから、僕からも何点か質問をさせてもらった。
「この人数のなかで、どうして僕に声をかけたんですか。怪しかった?」
「いや、怪しくないんですけど、大勢の方がこの時間休まれているなか、写真を撮っていたもので」
怪しく見えたんだろう。見えても見えないと答えるのがポリスの鉄則だ。
「いま着いたばかりですからね」
「そうですよね。飛行場で写真は撮りますもんね」
「ここは広いの?この先はどこまで行けるんですか?」
「第3ターミナルは一周約5分です。この先は手荷物検査場ですが、今はシャッターが閉まっています」
第3ターミナルは想像より小さいということが判明。もしや、搭乗ゲートまでが広くて歩かされるのか。
今年の3月、成田国際空港へ入場する際に行われていた身分証の提示が廃止された。それは成田空港の開港以来実施されており、成田を利用したことがあれば誰もが承知していた。身分証の提示は成田開港に反対する、過激派対策からだった。
ジャパニーズポリスが言うには、その廃止に伴い空港への出入りがフリーになり、空港内の警備が強化された。もう一点はパリ同時多発テロと靖国神社の爆発に伴い、警備を強化されているとのことだった。
最後にもう一点、質問をさせてもらった。
「この出来事をネットに書いてもいいですか?」
「構いません。成田空港はいま特別警戒中とお願いします」
凄い。今どきのポリスは宣伝も忘れない。こりゃ、一枚上手だ。
ということで、宣伝します。
「成田国際空港はただいま特別警戒実施中です!」
深夜に写真をパシャパシャ撮っていると、職質される可能性があるのでご注意を。
ジャパニーズポリスとの対談を終えると、飲食店のテーブルへ向かった。僕と同じく早朝の便を待つ人々だろうか。ソファはすでに埋まっている。こういう時は寝袋がいい。今度から空港へ前乗りする場合は寝袋を持参しようと思う。
それにしても徹夜で飲み明かすことはあっても、徹夜で飲みに行くことはあまりない。航空券の料金は気軽でも、そうは完璧に気軽にさせてもらえないのが頭の痛いところだ。