バンコクで外こもり?カオサン通りでパッタイを作る日本人

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バンコク滞在:2015.12.28〜2016.01.02

前回のあらすじ

日本人が多く集まるゲストハウス「NAT2」へ行くと30代前半の日本人男性がいた。名前はテリー。彼に話しを聞くと、夜はチャクラポン通りとランブトリ通りの交差点でパッタイを作っているという。それは仕事ではなく、手伝いだとテリーは言う。気になった僕はパッタイ屋台へ足を運んでみた。

カオサン通りの日本人

 

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何気なく通り過ぎる交差点の屋台も意識をして歩くと、テリーの存在は一目で分かった。彼の存在を知らなければ、屋台の向こう側に日本人がいるとは誰も思わないだろう。僕の存在に気づいてくれたテリーは当初に聞いていたパッタイではなく、串ものを器用に焼く姿があった。どうしたものかと聞いてみると、

「今は串ものを担当しています」

と答えながら一本ずつ丁寧に焼きながら目の前の客と会話をしている。

この交差点にある屋台は4店舗あり、パッタイ、串もの、ヌードル、フルーツの屋台は経営が一緒だ。それで今は串ものを焼いているという訳だ。ちなみに旅人に有名なカオマンガイの屋台は隣り合わせにあり別の経営者なんだそう。

テリーは串ものの販売が一段落すると、一本のレバー串を僕の元に持ってきてくれた。僕は串もののなかでレバーが一番好きで、タイのレバーは日本の下手な居酒屋よりも格段に美味いと思っている。表面は少し固めな食感で、中身はジューシー。味付けは塩をふりかけただけのシンプルさが抜群だ。しかし、多くの欧米人は内臓を食べない人が多い。注文する品は決まって肉の部分だ。各国の食文化がカオサン通りの屋台を通して垣間見ることができる。

ヌードルとパッタイ

 

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隣のパッタイとヌードル屋台に目を向けると、そこには欧米人とタイ人が注文する品の違いが見受けられる。多くのタイ人が注文する品はパッタイではなく、決まってヌードルだ。そこに砂糖や香辛料をたっぷりかけて麺をすする。その姿にテリーは「タイ人は長生きしない」という。
 
一方でパッタイを注文するのは多くの欧米人と、近年増え続けている韓国人だ。特に欧米人はヌードルに目はいかず、決まってパッタイを注文する。僕は以前、パッタイといえばタイの料理ではなく、カオサン通りの料理に感じる記事を書いたことがあった。もちろんそんな事はなく、立派なタイ料理のひとつであることに間違いはないが、この屋台の裏に座って眺めていると、あながち間違ってはなさそうだ。

テリーが言うには、パッタイは麺の種類が多いうえ仕込みがあり、ガス代の経費がかかる。それでも一番売れるのはパッタイだから儲けはパッタイが一番と言う。それほどカオサン通り周辺における欧米人の割合はバンコクでも随一で、パッタイを求める割合も多いことから、「パッタイはカオサン通りの料理」というイメージが僕のなかで出来上がったのだろう。
 

カオサンの屋台に立つ経緯

 

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それにしてもテリーはよく働く。いや、よく手伝っているという表現の方が正しいのか。串もの、パッタイ、ヌードルと次から次へとさばいている。

「こんなの誰がやってもすぐ覚えますよ」

と彼は言うが、昨日今日屋台に立ち始めた旅人とは様子が違う。パッタイに使う卵を片手で割る姿やヌードルの麺上げはお手の物だ。それにしても、なんでこの屋台に立つようになったのか。僕は純粋な質問をぶつけてみた。

「4年前に友達とこの屋台で食べていたんです。そしたら店のことが気になっちゃって、つい手を出しているうちに手伝うようになったんです」
「4年前からカオサン通りの屋台に立ち続けているの?」
「日本の寒い冬の季節だけタイに来ます」

僕は気なることが2点あった。まずひとつは、屋台で料理を食べていて、店のことが気になるとはどういうことなんだろうか。気になるのは本来目の前の料理のはずだ。ところが数日間この屋台に通うと気になる理由が見えてきた。

それは料理ではなく、屋台で働く人の方だったのだ。屋台は4店舗あり、ひっきりなしに客が来る。その時に肝心の作り手がいなくなる時があるのだ。理由は買い出しやトイレなど様々だが、ついつい手を出したくなる瞬間があるのだ。僕もそんな気持ちに動かされ、数個だがフルーツの売り上げに貢献させてもらった。もっとも僕は屋台の料理を頼まず、シェアさせてもらったビールで居座っているのだから、そのくらい当然という気持ちでやらせてもらったのだが。

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◇店員は疲れ果て睡魔に襲われる。気になる瞬間はこういう時だ

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外こもり?沈没? 

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もうひとつは、テリーは旅の沈没者ではなく、どちらかというと「外こもり」なのではということだ。それも日本が寒くなる冬だけタイへ渡航する姿は、まるで季節労働者さながらだ。

ところで「外こもり」とは、日本で2、3カ月働き、その稼ぎでアジアで暮らす若者のことを指す言葉で、海外でひきこもるから「外こもり」だ。その「外こもり」という言葉が一躍有名になったのが今から8年前、テレビのドキュメンタリー番組で取材を受けた「ふくちゃん」の存在だった。

バンコクのカオサン通りで外こもりをするふくちゃんは、名古屋の部品工場で働き、70万円ほど貯めた。そのお金でバンコクのゲストハウスで暮らし始めるが、やがてお金は底をつき、ゲストハウスを追い出されてしまった。その後、かつて手伝っていた旅行会社の店先で寝るようになり、ついには路上生活まで堕ちてしまったのだ。

そんなふくちゃんとテリーを重ね合わせてみるが、どうもしっくりこない 。テリーにはふくちゃんのような悲壮感はなく、ただの外こもりとは様子が違う。


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屋台が忙しくなる24時頃、一人のフランス人男性客がきた。年の頃は50代前半だ。彼と話しをすると、来月は札幌へスキーに行くという。僕はウインタースポーツはやらないので詳しくはないが、彼曰く北海道の雪質は世界でも有数なんだとか。そんな彼の職業は山のガイドだ。するとその話しにテリーが割って入ってきた。

「僕はインストラクターやっています。ラフティングのインストラクターです」

なんとテリーはただの外こもりではなく、群馬県でインストラクターの職に就いていたのだ。ラフティングといえばラフトを使った川下りを楽しむレジャースポーツだ。時には急流を降る激しいイメージも浮かぶ。穏やかなテリーのイメージとはかけ離れた印象だ。

そのラフティングがオフシーズンになると、温暖なタイへ渡航するという訳だから、どうやら季節労働者というのはあながち間違ってはいないようだ。

「この屋台に来ない日もあるの?」
「用事があったら来ませんよ。と言っても用事はあまりないんですけどね」

一カ所に長期滞在をしていれば、毎日用事が無いことは想像がつく。それでもタイをはじめとする東南アジアを旅するわけでもなく、ゲストハウスでゆっくりしているわけでもない。これは外こもりの新しい形なのだろうか。
 

なぜ今日もカオサンに

 
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テリーは桶に溜まった洗い物を横目に話しを続けた。

「手伝いだから皿洗いはやらないんです」
「なんでやらないの?」
「嫌いだからです」

と笑って答えた。

仕事ではないから嫌なものは断る。当然かもしれない。手伝いの報酬はビールやどこかへ連れて行ってもらうこと。家族ぐるみの付き合いで関係が築けているように感じたが、毎日深夜まで屋台へ足が向いてしまうのはなんなのだろうか。それはきっと働くことを美徳とする日本人のアイデンティティがそうさせてしまう気がしてならない。テリーは今夜もカオサン通りの屋台に立っている。

つづく
 
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