基地の街!横須賀アメリカ人街「どぶ板通り」で酒場観光してみました
2016.02某日
品川駅から京急の特快に乗り横須賀中央駅に来た。横須賀へ訪れるのは確か5年振りだった気がする。秋が深まる10月下旬に開催される「横須賀みこしパレード」に合わせたアメリカ軍の横須賀基地開放日だった。横須賀みこしパレードとは、横須賀中央駅前から横須賀基地までまでを、多くの御神輿や山車が練り歩く横須賀秋の風物詩だ。今日は特にイベントはないが、あの頃とこの街はなんら変わっていない気がする。
三笠公園探訪
駅前から続く商店街、中央大通りを歩くこと約10分、アメリカ海軍ウォンブルゲート前へ来た。大きく黒く光った錨のオブジェが目をひく。横須賀基地の開放日には、メインゲートはもちろんのこと、ここからも出入りすることになる。
直近の開放日は3月20日の「日米親善よこすかスプリングフェスタ2016」で、基地内に咲き誇る桜を見ながら花見ができる。その他の解放日は8月に開催される「日米親善ネイビー・フレンドシップデー」、上記で挙げた10月の「横須賀みこしパレード」だ。
ウォンブルゲート前を右手に海の方へ歩くと、三笠公園に出る。三笠公園は何と言っても大日本帝国海軍の戦艦「三笠」があることで有名だ。1904年(明治37年)からの日露戦争で連合艦隊旗艦を務め、連合艦隊司令長官の東郷平八郎大将が座乗したことから、三笠の前には東郷平八郎のモニュメントが設置されている。
三笠前に設置されている1848年製の30ポンドカノン砲。この大砲は1848年(安政元年)11月4日、伊豆下田港で大震災のために座礁破損したロシア艦隊軍艦ディアナ号の備砲と推定されているそうだ。ちなみにこの姉妹と思われる大砲が、靖国神社に保存されているらしい。
三笠の艦首は皇居へ向けられていて、さらに直線状にロシアへ向けられている。三笠は帝国海軍の象徴だったことが伺える。
三笠の横にある売店では、砲弾を商売にした「三笠砲弾豆」を販売。「カリッと弾ける!」のキャッチコピーに思わず苦笑いしかない。
なお、戦艦「三笠」の船内には有料で見学ができる。僕は以前に入ったことがあったので今回は公園を歩くことにした。
記念艦「三笠」
住所:〒238-0003 神奈川県横須賀市稲岡町82-19
入場料:一般600円、シニア(65歳以上)500円、高校生300円、小中学生無料、障害者200円(介護者2名まで)
観覧時間:4月〜9月は9:00〜17:30、3月・10月は9:00〜17:00、11月〜2月は9:00〜16:30
休艦日:12月28日〜31日
三笠公園の高台からは人気の無人島「猿島」がくっきりと見える。猿島は元々旧陸海軍の要塞として利用されていた島だ。近年ではその歴史遺産を楽しんだり、夏にはバーベキューを楽しむ観光客で溢れかえる。公園の側の港から出港するフェリーを見たが、オフシーズンにも関わらず、多くの乗客の姿を見ることができた。どうやら一年を通して人気の島のようだ。
◇音に合わせて動く水のショー。虹が綺麗に見えるんです
三笠公園は「日本の都市公園100選」、「日本の歴史公園100選」に選ばれており、テーマは「水と光と音」なんだそうだ。僕が訪れたときも水と音のショーが開催されており、夜になるとここに光が加わることだろう。
僕はふと思い出した。それはマレーシアのクアラルンプールを旅したときだった。大きくそびえ立つ2本のタワー「ツインタワー」に出かけ、麓のKLCC公園で開催されている噴水ショーを1人寂しく見たせつない思い出。人は水と光に集まる習性がある。そこに夜が加わると、なんとなく男1人でいると場違いの様な気持ちになる。何度旅をしても慣れないシチュエーションだ。
三笠公園
住所:〒238-0003 神奈川県横須賀市稲岡町82−14
開園時間:8:00〜21:00(11月〜3月は9:00〜20:00)
◇今回の位置関係
どぶ板通り探訪
三笠公園をあとにすると本町通り、通称「どぶ板通り」へ来た。京急汐入駅からアメリカ海軍基地を結ぶ通りのことをどぶ板通りと呼んでいる。どぶとはなんとも綺麗なイメージがないが、名前の由来は明治時代以降に及ぶそうで、帝国海軍の軍港街と栄えていたころどぶ川が流れていたそうだ。そのどぶ川が人の往来やクルマの通行に邪魔になり、海軍工廠より厚い鉄板を提供してもらい、どぶ川に蓋をしたことから、「どぶ板通り」と呼ばれるようになったそうだ。
ジャズの街
どぶ板通りを歩くと排水口の蓋やマンホールの蓋に目を奪われる。トランペットは夏のジャズの代名詞となっている「ヨコスカ・ジャズ・ドリームス」を想像しているのか。1987年に三笠公園で第1回目が開催されて以降、今ではよこすか芸術劇場で毎年開催されており、横須賀は「ジャズの街」としての顔もある。
マンホールの蓋
こちらのマンホールの蓋は「消火栓」と書かれているので、水道のマンホールの蓋だ。赤い消防車とともに描かれているキャラクター「アクアン」は、水の妖精をイメージした横須賀上下水道キャラクターで、水道創設90周年を記念して誕生したそうだ。
諏訪大神社
どぶ板通りから南の路地を入り諏訪大神社へ向かった。どぶ板通りのすぐ裏手は急な山道となっており、昔はこの一帯まで海だったのだろうかと考えさせられる。
長い階段を上り境内に入ると、眼下の国道16号線の騒音とはかけ離れた静けさが待っていた。都会のオアシスとはまさにこういうことを言うのだろうか。
向かいにはキリスト教精神に基づいた博愛的な医療を行うとした「ヨゼフ病院」があり、その屋上にはイエス・キリストが見える。つまり、この場所は2つの神が向き合って存在している場所ということになる。これは面白い。あとは、ヒンドゥーとイスラムが加わればマレーシアのペナン島並に世界遺産に登録されるかもしれないなんて勝手にニヤけてみる。
頭上を見上げると電線にリスの姿が見えた。木の実を頬張る姿に「都会の公園ではこうはいかないな」と呟いた。もうこの時点で僕は横須賀の街にすっかりやられてしまった。神社のすぐ裏手にある小さな諏訪公園からは海が見え、この街が海と山に囲まれた街ということを実感させられる。そして公園内には桜の木があり、春にはこの場所で花見をしたら気持ちがいいんではないだろうかと考える。
両替商
再びどぶ板通りへ戻ると両替商を発見した。今や訪日外国人目的に都心でも両替商は珍しくなくなったが、日本で両替商というとやはり基地の街のイメージが残る。この日のレートは1ドル=111.05円だった。
海軍カレー
横須賀といえばやはり海軍カレーも名物のひとつ。大日本帝国海軍の糧食に由来されており、一般的に日本風のカレーといえば海軍カレーのことを指す。なので、海軍カレーと名前が付いていると一瞬気持ちが傾くが、どうも興味がそこまで湧いてこない。そのせいではないが、夜になり通りを歩くアメリカ兵に「この辺で美味い店は知らないか?」と聞くと、「カレーチェーン店のCoCo壱番屋が一番美味い」と返答をもらったのには笑えた。あとから知ったのだが、横須賀のCoCo壱番屋にはここでしか食べることのできない限定メニューがあるらしく、次回再訪した際には店へ確かめに行こうと思う。
銭湯
どぶ板通りと並行する裏通りには銭湯の大黒湯がある。ちょっとひとっ風呂浴びてから飲みに繰りだそうと思ったら営業開始時間は過ぎているはずなのにシャッターで閉ざされていた。夜になり近所のバーで銭湯のことを聞くと、最近ずっと閉まっているらしく困っているんだと話していた。再開を望むところだ。
OFF LIMITS
銭湯の脇には無造作に置かれた「OFF LIMITS JAPANESE ONLY」の文字。日本人以外は立ち入り禁止の看板だ。実はさっきの諏訪大神社の入口にも同じことが書かれた看板が設置されていて、差別的な意味合いなのかと思っていたら、どうもアメリカ軍側で設置されたみたいだ。その昔、酒に酔ったアメリカ兵が住宅地や施設に入り込まないようにする注意喚起のために設置されたようだ。だとすると、この銭湯もその昔、酔ったアメリカ兵がひと暴れしたのだろうか。僕は日本人の酔っぱらい振りも目が当てられないものがあると思っているが、彼らの泥酔ぶりも沖縄の基地の街や旅先の海外で経験済みだ。
ミリタリー
どぶ板通りはその場所柄のせいか、ミリタリーショップも目立つ。今流行っているフライトジャケットの「MA-1」も本物を求めるならドブ板通りなら確実だろう。そして、誰もが知っている「スカジャン」は、横須賀米軍基地が発祥の地。第二次世界大戦後間もないころ、日本駐留のアメリカ軍兵士たちが記念としてテーラーショップにオーダーしたのが始まりだそうだ。
酒屋
酒好きな人は何気ない酒屋も観光スポットになる。その豊富すぎるビールの種類には圧倒されるはずだ。世界的にメジャーなビールは端に追いやられ、見たことのないビールが冷蔵庫の主役の位置にでんと居座っている。もう少し暖かくなれば、試飲を兼ねて外で一杯飲みたいところだ。
◇ここまでの位置関係
さて、どぶ板通りを散策すると本日のメインイベントである「ヒデヨシ商店」へ一杯飲みに行くことにした。ヒデヨシ商店は酒屋の角打ちスタイルの立ち飲み屋だ。しかも客層はそのほとんどが外国人らしい。これには気持ちが一層高まる。
▼ヒデヨシ商店の記事はこちら!!
老舗の大衆食堂「一福」
ヒデヨシ商店を出ると外は真っ暗。横須賀の街は夜の顔に変わっていた。次なる呑みどころへ行く前に腹ごしらえをすることにした。そこは汐入駅から近く渋い暖簾が店頭にかかる「一福」(いちふく)だ。
一福はBS−TBSで放映されている「吉田類の酒場放浪記」でも紹介された飲食店で、昭和24~25年頃創業の大衆食堂。かつては米軍基地の組合食堂だったそうだ。現在は食堂の顔もあり、酒場の顔もある「大衆食堂+酒場」といった立ち位置か。
店内に入るとまさに「THE大衆酒場」の雰囲気で、僕のテンションはあがった。店内の至る所に置かれた私物だかなんだか分からない荷物の無造作加減もいい。カウンターの脇にはテレビが置かれ、きっとシーズンになると野球中継が見られるはずだ。
メニューを見ると、かけそばとうどんかけが390円からで、中華そばの類はラーメンが430円からと懐に優しい料金設定だ。大衆的なところは味もさることながら、良心的な料金設定が嬉しい。
神奈川県ご当地のサンマーメン
豊富なメニューから選んだ品を、店員のおばちゃんが「美味しそう〜」と言いながら持ってきてくれたのは「サンマーメン」だ。サンマーメンとは神奈川県ご当地ラーメンで、もやしが入ったあんかけラーメンのことだ。詳しく調べてみると第二次世界大戦前から存在していたラーメンらしく、歴史のあるサンマーメンは神奈川県内の飲食店ではよく見かけるメニューだ。ちなみに魚のサンマは入っておらず、醤油ベースの昔ながらの味わいでとても美味しかった。
あとから知ったのだが横須賀出身の元X-JAPANのHIDEもこよなく愛した店だったそうで、HIDEは中華丼を好んで食べていたそうだ。次回再訪の際にはぜひとも伝説の中華丼を食べてみたいものだ。
一福
住所:神奈川県横須賀市本町3-12
営業時間:11:00〜22:00
定休日:日曜サンマーメン:530円
◇一福の場所
米兵で賑わう夜のどぶ板通り
一福をあとにすると夜のどぶ板通りは寒さがより一層深まっていた。そして迷彩服を身にまとったMPと呼ばれる米軍警察の姿を多く目にすることができ、街の治安維持に努めている。やはり基地の街というと治安の悪さがイメージとしてある。上記で紹介した「OFF LIMITS JAPANESE ONLY」の看板の意味も夜になりようやく分かってきた。どうやら山側一帯は全面的に立ち入り禁止のようで、過去にもひったくりをした黒人水兵が山に逃げた事件や、2008年に汐入駅裏の山で起きた米兵によるタクシー運転手殺人事件などがある。
米軍基地を抱える街で米兵が起こす問題は多く、その度に外出規制が敷かれ、近隣の飲食店の経営に響く。基地に依存する地元経済と治安の関係はなにも沖縄だけではなく、ここ横須賀でもその側面が伺える。
それでも「日本人の客だっているでしょ?」と言う人もいるが、これがほとんどの店が米兵しかいないのが現実だ。もちろん日本人が通う店とのすみ分けができているのだが、基地の街は米兵で潤っている。
george's
さて、はしご酒の再開だ。選んだ店は大きな木のドアが特徴的なテキサスのカントリーバー「george's」だ。
店内は見事に外国人しかいなく、日本人は店員だけの様子。思わず日本にいるのを忘れてしまう感覚に陥る。僕が注文したのはジョッキの生ビールで料金は600円。バーでビールを頼めば大体グラスだが、沖縄でもそうだったが基地の街はジョッキで提供され、しかも料金はグラスビール並みというところがとても嬉しい。ビール好きにはたまらない街である。
店内にはビリヤードもあるが、ビアポン(Beer Pong)の台もある。僕がビアポンを見たのは1年前のラオス・バンビエン以来だ。ビアポンとはアメリカ発祥のゲームで、基本的には2人対2人のダブルスで行われる。カップを目掛けて各チームが交互にピンポン玉を投げ合い、相手が投げたピンポン玉が自分のカップに入れられるとビールを一気で飲まなければならない。いかにもアメリカらしいゲームだ。
このゲーム、単なる酒場のゲームと思いきや世界大会まであるらしく、優勝賞金は5万ドル、日本円で約600万円というから目を疑ってしまう。日本ビアポン協会というのも存在しているので、興味のある人は基地のあるバーに通って練習するのはいかがだろう。
george's
住所:神奈川県横須賀市本町2-13
営業時間:16:00〜1:00
定休日:なし
クレイジーチューハイ
george'sをあとにあとにし、再びドブ板通りを歩く。一軒目に行ったヒデヨシ商店もそうだったが、彼らはほんとに酎ハイが好きなようで、街の至る所で「CHU-HI」の看板が目立つ。目立つといえば「Crazy」の文字も至る所で目にすることができる。彼らは飲んで飲みまくってクレイジーになる。どぶ板通りの酒場では、「CHU-HI」と「Crazy」の2文字はキーワード。沖縄の基地の街の酒場では見なかった文字だ。
◇クレイジーとは変わり者、気が狂って、頭がおかしいという意味なんです
◇クレイジーキャプテンコークを一気に飲めば、きっと頭がおかしくなること間違いなしでしょう
というわけで、移動した3軒目のバーでクレイジーキャプテンコークを飲んだ僕はほんとに気が狂ってしまい本日の横須賀探訪は終了。行こうと思っていた翌朝5時まで営業しているクラブには辿り着けず、泊まる覚悟で来た横須賀だが東京の自宅へ帰ることにした。
・汐入駅の時刻表はこちら
・念のために調べておいた横須賀のカプセルホテル&サウナはこちら
感想
「東京・品川から約1時間。横須賀はパスポートのいらないアメリカを近くに感じることができる街だった!!」
最後に筆者から
今回約5年ぶりに訪れた横須賀でしたが、今横須賀の街はとある危機に直面しているそうです。それは2013年の1年間における転出超過数が1,772人で、全国ワーストワンだったことです。リアス式海岸のように谷が入り組む地域に開発された横須賀特有の住宅地、谷戸(やと)地区の限界集落は、5〜6軒に1軒は空き家という市の深刻な問題を抱えているそうなんですね。そんな空き家を横須賀市では「空き家バンク」として安価で提供していることを知りました。次回の横須賀探訪では、そんな谷戸地区を訪れたいと思っています。
また、僕と一緒に基地の街で飲んでもいいよ!って言う人はこちらまでご連絡下さい。パスポートは自宅に置いて、近隣のアメリカで一杯やりましょう。
▼どぶ板通りではしご酒の記事もご覧下さい!!