ブログと酒場と横須賀と 〜互いのブログを通じて出会いました〜
4月中旬の日曜日。その日は早朝まで残った雨に加えて、激しい風が吹き荒れる日だった。そんな天候のなか、僕は神奈川県の横須賀にいた。思えば先月、先々月も横須賀へ訪れており、なんだか恒例となってしまった横須賀酒場探訪だ。
しかし今回はいつもと勝手が違う。それは人気ブログ『isLog [イズログ]』の筆者、ishikawaさんと共にする横須賀探訪だからだ。勝手が違うのは何も人気ブログという理由よりも、初めて会うという理由の方が優っていた。緊張というやつだ。それなら何も初めて会う場所が横須賀ではなくていいものの、僕が度々記事にする横須賀の酒場記事を読んでもらい、ぜひ足を運んでみたいというのが経緯だった。
それまではブログ上の交流が幾度か続いていた。きっかけはishikawaさんの記事、会いたいと思った人に会える周期 これを運気の上昇と言うのだろうか - isLog [イズログ]で僕がコメントしたことだった。コメントの内容は確かこうだったと思う。
「僕はishikawaさんに会ってみたいものです」
僕はishikawaさんの執筆するisLogがとても好きだった。パソコンの画面にピタッとハマるブログのデザインと配色。そして何より肩の力が抜けた、けれんみのない文章。さらに時より見せるアーティスティックな一面も。
そんなishikawaさんと巡る横須賀酒場探訪は、横須賀中央駅の裏手にある山の散策から始まった。これは旅先のゲストハウスで知り合った人と、いきなり観光や飲みに出かけてしまうパターンとよく似ている。
まずは駅前の大通りと並行するアーケード街、三笠商店街を歩いた。商店街は飲食店、日用品、食品などの店舗が並び、他の商店街となんら変わらなく見えるが、そこにミリタリーショップがポツンと存在すると、あぁ横須賀に来たんだなと感じる。
その商店街を進むと、豊川稲荷成田不動尊への入口が見えた。目の前には気の遠くなるような階段が遥か彼方まで続いている。しかし、ここで俯くわけにはいかない。なにせ横須賀は山の街だ。この山と仲良く付き合うことが、横須賀とうまく付き合えるものだと思っている。
◇階段を少しだけ登れば、横須賀が山の街だということを実感できます
階段を登り切ったところで、徳寿院という寺院の前に出た。するとここでisikawaさんが何やら石垣に生えた草を触っているではないか。その瞬間を見たとき、僕はコレだと思った。isLogの読者なら承知のことかもしれないが、ishikawaさんは道端に生えている雑草が好きで、雑草用のセメントプランターも造っている。それらは惜しみなくブログで公開しているので、僕はコレだと思ったという具合だった。
◇石垣に生えた草に向き合うishikawaさん
「雑草という名前の草はない」 セメントプランターに植えた道端の植物 - isLog [イズログ]
昨今、田舎暮らしや地方への移住がブームらしいが、東京から電車で1時間半ほど移動をすれば、そこは地方でなくとも立派な田舎と感じる。例えば今いる横須賀もそうだが、鎌倉だって伊豆だって田舎といえば田舎だ。中央線を西へ向かえば、高尾だって田舎だろう。
そして田舎に定義があるとしたら自然が豊かだったり、食事、特に山の幸、海の幸が美味しいということだろうか。だとしたら横須賀は都心への交通の便が良いにもかかわらず、胸を張った立派な田舎と呼んでいいかもしれない。
◇山の上から横須賀の海が見える。僕は山と海がある街が好きだ
街はこれでもかというくらいに坂で出来ている。若い時分はいいが、歳を重ねたらこの街で暮らすのは容易ではないかもしれない。それを表すかのように、通常空き家は7軒に1軒の割合だそうだが、横須賀は5軒に1軒が空き家と言われているらしい。これはとても深刻なことだと思うが、横須賀市では空き家バンクの活動も行っているらしく、今後この辺りを調査してみたいと思う。
◇自分の家に入るにも坂を登る。これが横須賀で暮らすということなのか
高齢化が進む一方で、治安や近所の付き合いはいいのかもしれない。とにかく治安に関しては米兵がおかしな事件さえ起こさなければ……というイメージがある。
◇そんな米兵が立ち入らないように設置された看板を沢山見かけます
僕はこの横須賀に思うことがある。それは、まだ心は固まっていないが、横須賀に住んでみたいなと常々思っていることだ。そういう視点から街を見ると、あぁいいなと思う家が見えてくる。
◇こんな家や…
◇こんな家もいい
◇どことなく沖縄を感じるこの通りもいい
そして道を歩けば色濃い緑に出会える。バンコクで沈没している場合ではない。今や横須賀で沈没だろ?という気分にさせてくれる。
そんな沈没気分に相性が良いのは、僕の場合酒となる。持参した缶ビールを海が見渡せる場所で口にすれば、あいにくの曇り空でも心は晴れ晴れとなる。プルトップを勢い良く開け、ishikawaさんと横須賀に乾杯。昼間のビールはなんで効くのだろうか。気分は一気に良くなる。
そして僕の目線はishikawaさんの足元へ。ishikawaさんは裸足で歩くことが好きなことはブログを読んで知っている。なのに今日は靴を履いているじゃないか。こんな緑豊かな自然があって、海が一望できて、雨上がりの土の匂いもするというのに、どうして裸足にならないんだ。
そうか、缶ビール1本くらいでは、まだ打ち解けられないんだな。それも致し方ない。なにせ互いは今日会ったばかりだ。それならばもうちょっと飲むしかない。幸い2人は酒が好きだった。山を下り、酒場があるドブ板通りへ歩きだした。
ドブ板通りのバーに腰をかけ、話題はブログへ。ishikawaさんのブログといえばアートだ。プロフィールにも「アートが根付いた国では絵だけで食えるのか」を確認するために、ドイツのベルリンで活動を行った経歴を書いている。そのアートに目覚めたのは子どもの頃。絵を書くのが好きな少年だったそうだ。そして影響を受けた存在があった。それは陶芸や版画に勤しむ祖母の姿だった。isLogでは祖母が登場する記事が幾つかある。読者としては、記事とリアルな話しが段々と繋がってくるようで面白い。
その後ishikawaさんはアメリカへ留学をし、バスケットボールと絵にほとんどの時間を割いていたが、美術の授業でひとつ気になる点があった。それは課題による宣材の指示だったそうだ。そのことを祖母に伝えると、4年制の大学を捨て、2年で日本へ戻ることになった。やはりここでも祖母の影響が出てくる。
日本に戻ったishikawaさんは専門学校へ入学。その後色々な人と出会い、「日本で絵が売れるわけがない」、「なんで日本でやってんだ」という声を聞き、ヨーロッパの深みのあるアートが好きな思いからドイツ・ベルリンへと旅立った。
問題はベルリンへ渡航してからだ。実際に絵だけで飯を食えるのかどうか。それがishikawaさんは食えたそうだ。日本では有名な絵書きになっても、なかなか食うことを維持することは難しい。それに比べてアートが根付いた国では、若手でも食っていけることを実際に身を持って証明したのだ。
それらを踏まえて、日本ではアートが根付いていない事をブログの記事にすると、それを読んだ読者から叩かれ苦しんだそうだ。叩かれたということは、そんなことはないという否定のコメントが多かったのだろう。しかし、日本の日常の生活において絵が根付いているとは僕も思えない。日曜日の昼下がりに、路上で絵を売るマーケットも存在していない。いや、唯一近いものでフリーマーケットの存在がある。しかしishikawaさん曰く、フリーマーケットで絵は売れないそうだ。
近年、絵を買った事がある人は一体どれだけいるのだろう。僕が最後に購入したのは約8年前。アメリカンビンテージの絵を古着屋で購入して以来、未だ絵を部屋に飾ったことはない。
そんなisLogに寄せるコメントはアート系が断トツに多いそうだ。僕の旅ブログとは一見接点がないように思えるが、isLogでは「日々生きること自体が旅」をモットーに、日々の旅を中心に綴っている。なんとも憎い演出である。
今回ishikawaさんの話しを聞き、ブログの記事とリンクをした会話ができたことがとても面白かった。それは、リンクしただけではなく、ブログでは書いていないちょっと掘り下げた話しを聞けたこともある。それと同時に僕もブログで記事を書いているということを改めて認識した次第だった。こういうのをブロガー同士の交流というのだろうか。だとしたら、僕が書いた横須賀の記事は後々活きたということ。とても嬉しく思う。
数軒のバーをハシゴした後は、ビリヤード対決で横須賀の夜をシメる。負けたら勝った人の文体で記事を書く。そんな勝負を自ら挑んだ僕が対決に負けてしまった。トホホ……。これが言い出しっぺの法則というやつか。それではリスペクトして書かせてもらう。
ドブ板通りは京急汐入駅の南側にあります。僕は何度か訪れていますが、ishikawaさんは初めて。目当てのヒデヨシ商店へ向かうと日曜でお休みでございます。これにはがっくりしましたが、また来るからいいのだよー。
うん、いい感じだ。 まだisLogを読んだことがない人は、ぜひishikawaワールドに包まれてみることをお勧めして、今回の記事を終わりにしたいと思う。
ドブ板通り
住所:神奈川県横須賀市本町2丁目
ジョッキビールの料金:どのバーも大体600円から
◇ドブ板通りの場所
ishikawaさんの横須賀記事はこちら!!
汐入駅前のヒデヨシ商店の記事はこちら!!
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