夏の横須賀汐入散策!ヴェルニー公園周辺を音楽で振り返る
ヴェルニー公園
横須賀散策一日のスタートはヴェルニー公園から始まる。横須賀の公園というと、どうしても三笠公園へ足を運ぶ人が少なくないと思うが、京急汐入駅とJR横須賀駅の中間に位置するヴェルニー公園は、港に面した面長の公園で、三笠公園と比べて人も少なく、ゆるりと過ごすことのできる公園だ。
◇港の見える公園でちょっと一服。ほんとに静かなんです
公園のベンチに腰を下ろし港へ目をやれば、船の整備をする「ドライドック」と軍艦が見える。その軍艦を見ながら3人で早くも乾杯。駅前で購入した缶ビールのプルトップをプシュっと開けて、一気に喉元へ流し込む。東京近郊の港は幾つもあるが、この光景で一杯できる港はここしかないと思うとビールがやけに美味く感じた。
僕は元々軍モノ、ミリタリーに憧れるところが少々あったが、憧れはミリタリーそのものより、アメリカ海軍の戦闘機パイロットの青春群像を描いた映画『トップガン』とその主人公トム・クルーズだった。僕とは似ても似つかないその容姿に憧れたのと同時に、一匹狼からチームワークを知るその内容に感銘を受けた記憶があった。
その映画製作には原子力空母の「エンタープライズ」が全面協力をしたが、ここ横須賀にも原子力空母の「ロナルドレーガン」が2015年に配備され、現職の首相としては初めて安倍晋三首相が、配備された2015年に乗艦している。
安倍首相は乗艦した際に、東日本大震災のときの「トモダチ」配備を心から歓迎する発言をしたそうだが、僕は今回の横須賀散策に付き合ってくれたishikawaさんとやかんに伝えたい。「トモダチ」配備をありがとう。そんなヴェルニー公園で脳裏に流れた曲は、やはりこんな曲だった。
Danger Zone/ケニー・ロギンス
ヴェルニー記念館
ヴェルニー公園の先に進むと、ヴェルニー記念館なるものを発見。ヴェルニー公園にヴェルニー記念館……。一体ヴェルニーとはなんぞやと思い調べてみると、日本近代化の起点ともいえる横須賀製鉄所をつくりあげたフランス人技師ヴェルニー氏のことなんだとか。当時の徳川幕府の要請で呼ばれたヴェルニーは帰国するまでの10年半、日本のために造船業に励んでくれたのだった。
また、横須賀製鉄所では、日曜休日制や、労働時間、健康診断などの新しい仕組みが横須賀製鉄所で始まったといわれている。そして後の世界遺産「富岡製糸場」のモデルにもなったとか。色々なルーツがある横須賀製鉄所はその後横須賀造船所となり、現在は米海軍横須賀基地となっている。
早速記念館に入ろうとするものの、急な角度の屋根に目がいってしまった。これもヴェルニーの出身国、フランスのブルターニュ地方の住宅の特徴なんだとか。日本ではあまり見かけない屋根の角度だと思うのと同時に、ロフト付のアパートの屋根で見かけることもある。あれ、比較がなんか違うか?
館内に入ると正面に存在感のある重機のようなものが出迎えてくれた。これはヴェルニーの指示により横須賀製鉄所に設置された「スチームハンマー」だ。とはいってもスチームハンマーとはなんぞやと、頭のなかがはてなになる。どうやら簡単にいうと、動力にスチームを使用してハンマーを持ち上げる。そのハンマーが落下する力で金属素材を打ち延ばす工作機械のことらしい。
凄い。スチームでハンマーが持ち上がるんだ。これって常識なことなのか。僕には高圧洗浄機の名前にしか聞こえない。
「ジャパネットたかたが厳選した高圧洗浄機、スチームハンマー!!」
自分の知識のなさに嫌気がさすが、やかんにウケたから、良しとしよう。そんなときに脳裏に流れた曲は、やっぱりヴェルニーの出身国フランスの作曲家だった。見たこともないスチームハンマーの動きは、この曲にあう気がするんだけどな……。
ボレロ/ラヴェル
◇もうひとつのスチームハンマーも存在感があります。どちらも国の重要文化財だそうです
◇どことなく酒場の灰皿にも見える金型でフックを造るらしいです。反転したYOKOSUKAの文字が格好いいですね
ヴェルニー記念館
住所:238-0045 横須賀市東逸見町1-1
営業時間:09:00〜17:00
料金:無料
定休日:毎週月曜日・年末年始(月曜が祝日の場合、翌日が休館)
◇今回の位置関係
JR横須賀駅
横須賀最寄りの駅といえば、賑わいのみせる京急横須賀中央駅を思い出してしまうが、ヴェルニー公園の西側にあるJR横須賀駅の佇まいが、なんともいえない哀愁が漂っていて好きな駅のひとつだ。その駅前に来るとishikawaさんがぽつりと呟いた。
「ペンタゴンに似てないですか?」
ペンタゴンとはアメリカ国防総省の本庁舎、ペンタゴンを意味しているのだろう。僕はペンタゴンをその目で見たことはなかったが、ここがアメリカ海軍に近いせいか、不思議とそれらしく見えてくる。そして、ペンタゴン、いわゆる正確な五角形ではないものの、駅の正面から見ると五角形に見えたのだった。
*現在のJR横須賀駅は1914(大正3)年に建てられた2代目の駅舎の形をそのまま残し、1940(昭和15)年に改築されたそうです。ノスタルジックな駅舎は台湾でよく見かけましたが、日本国内でもまだまだ見かけることができるんですね。
◇マスコットのスカレーがお出迎え。カレーの街だけにスカレー?
JR横須賀駅の踏切からはトンネルが見えた。つまりその上には山があるということだ。ヴェルニー公園の港と駅は目と鼻の先の距離だから、この一帯は平地が少ないことが分かる。僕は元々海と山がある街が好きだった。行ったことのある街なら九州の長崎、広島県なら尾道、北海道の小樽など、海と山の距離が近くてコンパクトな街が好きだった。しかし横須賀はいずれの街と比べても平地が少なく、海と山の距離が近すぎるのだ。その近すぎる光景が僕には新鮮で、身を置いていて飽きなかった。
海、山、ノスタルジックな駅舎、そこに夏という季節が加わり、海からはカモメの声と汽笛の音。山からはうるさいくらいの蝉の声が聞こえる。その海と山の間には線路が走り、トンネルが構える。トンネルの先を見れば、またトンネルの姿がある。あの先は未来だろうか、それとも過去だろうか。僕はなんとなく幼少のころの夏休みを思い出してしまった。そんなとき脳裏に流れた曲は、愁いを帯びた旋律のエリック・サティ、ジムノペディ第1番だった。
ジムノペディ第1番/エリック・サティ
3人はほろ酔い気分でヴェルニー公園の散策を終えると、横須賀名物、山の住宅街を巡ることにした。だが、その前にishikawaさんが手を腹にあて「腹減ったー」と訴えかけてきた。ishikawaさんの横須賀での細やかな夢は、春先に来たときは閉まっていたどぶ板通りの大衆食堂「一福」で、神奈川ご当地ラーメンの「サンマーメン」を食べることだった。その夢を叶えるため、3人はどぶ板通りへ向けて歩き出した。
ishikawaさんのisLog ヴェルニー公園の記事はこちら!!