変わりゆく都会のホーチミン街歩き 〜コロニアル建築から夜のブイビエン通り〜
ホーチミン滞在:2016.05.06〜09
北部ハノイからスタートし、途中フエ、ホイアンに滞在したのち、南部ホーチミンまで来た。その距離は約1800kmで、日本にたとえると、青森ー鹿児島間を移動したことになる。北から南へ移動すればその景色はガラッと変わり、ハノイで見なかった高層ビルをホーチミンでは嫌というほど見ることになる。首都はハノイだが、街として発展しているのはホーチミンなのだ。
人民委員会庁舎とホーチミン像
ドンコイ通りと並行して走るグエンフエ通りは、2015年4月にベトナム初の歩行者天国として生まれ変わった。人民委員会庁舎とホーチミン像から続く中央の幅広い遊歩道は、街を走るバイクの喧騒を忘れ、ゆるりとした空気が流れている。
◇コロニアル建築と高層ビルの間に遊歩道。暑いせいか人の姿はまばらで、広い空間をもてあそんでいます
◇人民委員会庁舎の場所
ベトナム初の都市鉄道計画
そんなホーチミンの高層ビルは現在も建築ラッシュの真っ只中だが、無数のバイクが走る道路の下ではベトナム初の都市鉄道が建設中だ。その路線は8つ計画されており、そのうちの1路線が、ホーチミン市都市鉄道1号線で、総延長は19.7km。そのうち都心部の2.5kmは地下、郊外の17.2kmは高架で踏切はゼロ、最高時速は100km超という壮大な工事が行われている。
工事は日本の円借款によって行われており、清水建設と前田建設が請け負っている。日本がアジアのなかでいち早く経済発展できた理由に、都市部の交通網を整備したことがある。その建築技術のノウハウが、ここホーチミンで活かされているということみたいだ。
◇ハイソなベトナム人は週末の夜、高層ビルのルーフトップバーに集まる。ホーチミンに雑多なアジアは感じられない
美しいコロニアル建築の中央郵便局
美しいコロニアル建築の建物は郵便局で、1886年から当時ベトナムを統治していたフランス政府によるフランスへの連絡手段として造られたものだそうだ。僕が訪れた2年前の外観は確かピンクだった気がするが、気のせいかと思い調べてみると、2015年2月に現在の薄いクリーム色に塗替えられたそうだ。さらに調べてみると、薄いクリーム色になる前には、鮮やかな黄色だったそうだが、それが鮮やかすぎると問題になり、紆余曲折で現在に至ったんだとか。街の景観とは大切なことだ。
◇内部に入り上を見上げれば、アーチ状の天井が美しく、正面にはホーチミンが見守っている
観光名所として有名な中央郵便局だが、郵便業務として現役の郵便局だ。旅の思い出にここから手紙を出す旅行者も少なくない。だが、高価なものを送ると、係員が盗む話しもある。これが一筋縄ではいかないベトナムということなのか。
◇各国の時間が分かる時計があります。その下には電話ボックス。旅の思い出に国際電話?
◇中央郵便局の場所
一際目立つサイゴン大聖堂
中央郵便局の向かいにある、見てそれと分かる歴史的な建築物がサイゴン大聖堂だ。サイゴン(ホーチミン)が、フランスの植民地だった1863年から1880年にかけて建設されたカトリックの大司教座大聖堂。その内部は美しいステンドグラスで有名だ。
◇内部は教会独特の静けさで、外の喧騒を忘れます
◇美しいステンドグラス。見ていて飽きません
ホーチミンが東洋のパリと呼ばれるなら、ドンコイ通りはホーチミンのシャンゼリゼ通りなのか。周辺は植民地時代の面影が残る。
◇サイゴン大聖堂の場所
ポニーが走る?フートー競馬場
安宿街のあるブイビエン通りから西にあるホーチミン市11区に、フートー競馬場がある。ベトナムで現存する唯一の競馬場ということで、これはぜひ行ってみなければという思いで向かった。
しかし場内に入ると馬の姿は見えず、代わりにあるのはサッカーコートだった。調べてみると、どうも5年ほど前に競馬を主催する会社とフートースポーツクラブ(競馬場の持ち主)の再契約を市が認めず競馬場は廃止になったようである。これにはがっかりしてしまった。
ベトナムで競馬とはピンと来ないが、これもフランス植民地時代の名残りなのだろうか。しかしフランス競馬を想像するとそうでもなく、ネットの情報によると、馬はポニーで騎手は子どもという。さらに興味が湧くが、時はすでに遅し。荒れたダートコースを眺めるだけだ。
◇人のいないスタンド。ここで競馬新聞片手に目当てのポニーを絶叫?
◇馬券売り場の面影。わけも分からず馬券を購入してみたかったものです
◇ポニーの代わりにサッカーユニフォーム。どう見てもスポーツクラブなんですね
残念ながら廃止になっていたフートー競馬場だが、味わいのある建物を見れただけでも良しとした。それは、いつしか取り壊されてしまったら、その面影すら見ることはできないのだから。
◇フートー競馬場の場所
消えたブイビエン通り名物
多くの旅行者が安宿を求めて訪れるのが、ブイビエン通りだ。そのブイビエン通りの角にあるバー「クレイジー バッファロー」の赤い建物を見ると、あぁホーチミンに来たんだなと感じる。そのブイビエン通り夜の名物といえば、歩道から車道まで広がったゴザの光景だ。日が暮れ始めたころから人々が集まり、ゴザの上に座っては酒盛りをする。その光景は日本にたとえると、花見のような光景だ。路上には炎の松明を持った少年がファイヤーダンスをしては、ゴザに座った客を楽しませる。それがホーチミン・ブイビエン通りの夜だと思っていた。
しかし2年ぶりに訪れてみるとその光景はなく、背もたれのついたプラスティック製の椅子が歩道に綺麗に並んでいた。これには思わず肩を落としてしてしまった。ブイビエン通りは、安価なビアホイがあるわけでもないから、やはり雑多でカオスなところが魅力的だった。変わりゆくホーチミン。そのひとつに酒場の光景も加わった。
◇ブイビエン通りって、こんなに広かったんだ? 久しぶりに見る光景に戸惑います
◇ブイビエン通り、クレイジーバッファローの場所
最後に筆者から
たかが、されどの言葉があるが、2年の歳月はホーチミンでは大きかった。人民委員会庁舎前には広い遊歩道ができ、地下には鉄道工事が始まっていた。その工事に伴い、国営デパートは閉鎖され、空を見上げれば多くの高層ビルにルーフトップバー。まだまだ建設中の高層ビルも見える。夜のブイビエン通りに足を運べば、雑多な飲み屋街の姿は消えていた。ホーチミンはいま真の都会になろうとしている最中だった。
アジアを旅していると、どうしても雑多さを求めてしまうところがあるが、経済の発展が著しい側面は、同じアジアに暮らすものとしては喜ばしいことだ。そして成長を遂げたベトナム・ホーチミンにいつか再訪し、完成した鉄道に乗ってみたい気持ちもある。
昔を旅した人にしか分からない、昔は良かったなという思いは味わえないが、変わりゆく街を旅できるのも、いまを旅する人にしか味わえないことだ。それはいつの時代も旅するということは、そういうことなのかもしれない。僕はいまを良かったと思えるか、それは月日が経ってみないと分からない。きっと旅はまだ続く。
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