ホーチミンのマジェスティックホテル サイゴンに憧れて 〜沢木耕太郎のあしあと〜

ホーチミン滞在:2016.05.06〜09

灼熱の太陽が照り続ける昼下がり、少しでも涼しさを求めてサイゴン川を歩いた。川辺に目をやると小さな子どもやカップル、家族連れなど、日常のベトナム人の光景が見えた。その様子を見ていると、どこで見たかは忘れたが、『サイゴンの昼下がり』という本があった気がした。純白のアオザイを身にまとった女性こそいないものの、その光景は本のタイトル、サイゴンの昼下がりがぴったり似合う光景だった。

川沿いをさらに北へ向かって歩くと、乳白色の立派なコロニアル調の建物が出てきた。そうか、これがマジェスティックホテルなのか……。僕は目の前のマジェスティックホテルを見て、また思い出した本があった。それは沢木耕太郎がベトナムを南から北へ縦断する旅行記『一号線を北上せよ』だった。

  

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一号線を北上せよのあしあと 

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◇豪華な扉のマジェスティックホテル入口

二十分もすると、河の匂いがしてくる。タクシーは川沿いの大通りを走り、やがてコロニアル調の建物の前に横づけされた。それがマジェスティックホテルだった。

沢木耕太郎 著 『一号線を北上せよ』より

 


沢木さんはホーチミン・タンソンニャット空港からタクシーに乗り、向かったホテルがサイゴン川沿いに建つマジェスティックホテルだった。そのマジェスティックホテルの創業は1925年。まだベトナムがフランスの植民地時代に創業され、フランス人による社交場として賑わったそうだ。また、ベトナム戦争時にはスパイやジャーナリストの活動の拠点としても活用されたようだ。

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◇ホテルの壁には輝く5つ星。一流のホテルの証ですね

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中に入るとクラシックな雰囲気のロビーが見えた。天井からはいかにも豪華なシャンデリアが下がり、壁には美しいステンドグラス。格調のある空間に、自分のビーチサンダル姿が申し訳けなく思う。

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◇ステンドグラスにシャンデリア。格調の二大共演です

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◇天井の美しさに思わず見とれて首を痛めます

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『一号線を北上せよ』のなかで、木製の自動ピアノがショパンを演奏しているとの記述があったが、そのピアノがロビーにあった。残念ながらピアノの音色を聞くことはできなかったが、ここでショパンが流れていたら感動したに違いない。

ピアノの横に目をやると、食堂が見えた。沢木さんの朝食は、毎日マジェスティックホテルの食堂だった。とりわけベトナムヌードルのフォーが気に入ったようで、こんな記述がある。

朝食はマジェスティックホテルの食堂でとる。とりわけ私には麺類が日替わりで出てくるのが楽しみだった。ヴェトナム風うどんに鶏肉をのせたフォー・ガーのときもあれば、牛肉をのせたフォー・ボーのときもあり、麺が日本のラーメンに似た黄色いミーのときもあれば、春雨のようなミエンのときもある。私はまずそれを食べてから、卵料理や野菜パンなどの洋風の朝食をとる。何日かすると、私がテーブルに坐っただけで、アオザイ姿のウェイトレスが麺類の椀を持ってきてくれるようになった。

沢木耕太郎 著 『一号線を北上せよ』より


沢木さんは街に出てもフォーを食べる様子が描かれており、そこにバケットサンドのバインミーは出てこない。ホーチミンではフォーしか食べていないんじゃないかと思ってしまう。 それくらいフォーが気に入ったのだろう。

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◇沢木さんが朝食をとった食堂と思われます

マジェスティックホテルにはロビーの食堂以外に、屋上のテラスバーもあるらしい。そのテラスバーはたとえ宿泊していなくても、バーだけの利用もできるらしく、それを知っていたらと帰国してから物凄く後悔をした。おそらく缶ビールだけでも千円近くはするはずだが、そんなことはどうでも良かった。

というのも、沢木さんもこのテラスバーを利用して、サイゴン川を眺めながら一杯やっていたからだ。

シャワーを浴びるとまた屋上のテラスバーに行った。軽く一杯飲みたくなったのだ。
通りすがりにカウンターの奥にいたバーテンに訊くと、このバーには「ブリーズ・スカイバー」という名前がついているのだという。ブリーズは、BREEZE、そよ風の意なのだろう。
席は前日と同じくオープン・エアーのサイゴン河を見下ろせるところに坐った。何を呑もうか考えていると、ボーイが持ってきてくれたメニューの中に、「ミス・サイゴン」という名のカクテルがあるのが眼に留まった。

沢木耕太郎 著 『一号線を北上せよ』より

 

これを読んでしまうとビールなんか飲んでいる場合ではない。カクテルのミス・サイゴンを絶対飲みたくなる。そのミス・サイゴンを沢木さんはこう評している。

スピリッツにライムを絞り込み、甘みを加えるために何らかのリキュールを数滴たらしたものだった。しかし、そのリキュールが何なのかは、私の粗雑な舌では識別できなかった。

沢木耕太郎 著 『一号線を北上せよ』より

 

よし、 これには何のリキュールなのか自分の目で確かめてみたくなった。ネットで検索すれば、その正体が分かるかもしれない。だが、そこはあえて検索などせず、改めてホーチミンへ行って確かめたくなる思いにかられる。ちなみにミス・サイゴンの1杯の料金は四百円だったそうだ。

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◇マジェスティックホテルのテラスバーの光景 (画像:じゃらん海外より)

どこで見たか忘れたが、サイゴン川はマジェスティックホテルのテラスバーから見るのが一番いいという話しを思い出した。それはテラスバーの前を、ちょうどUの字に大きくカーブするサイゴン川の姿が圧巻という話しだった。その話しを思い出したら、さらにその光景を見たい想いが強くなってしまったではないか。

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◇夜のマジェスティックホテル外観。美しいですね、惚れ惚れします (画像:じゃらん海外より)

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マジェスティックホテルの料金


それにしても沢木さんは、この豪華5つ星のホテルに何泊したのだろうか。そう思い著書を調べてみると、最低でも3泊はしているようだが、食堂のくだりを読むと5泊くらいはしているのではないだろうか。となると気になるのが宿泊料金だが、沢木さんは日本から直接マジェスティックホテルにファックスで申し込み、八千円で宿泊をしている。本が出版されたのは2003年だが、一体いつの時代の旅なのだろうか。街の食堂で食べたフォーが1杯5千ドンの記述があるが、今なら安くても2万ドンくらいだから4倍。となると、このホテルの宿泊料金は、今なら3万2千円くらいだろうか。5つ星ホテルなら妥当な料金だろう。

 

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◇男の一人旅には似合わない?そんなことはどうでもいいんです (画像:じゃらん海外より)

そう思ってホテルの検索サイト「じゃらん海外」の画面を見ると呆気にとられてしまった。その料金は朝食付で約1万円。決して手が届かない料金ではなかった。毎度安宿に泊まる身としては、財布の中身が気になるところだが、なにせ憧れのマジェスティックなのだから。

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◇5つ星のホテルが朝食付で約1万円。ほんとにいいんですか? (画像:じゃらん海外より)

しかもじゃらん海外なら1万円以上の宿泊で千円オフのクーポンが使えるじゃないか。そしたら1泊9千円でマジェスティックホテルに泊まれることになる。これには目を疑ってしまうが、もう1人の自分が問いかける。

「5つ星ホテルでクーポンはセコくないか?」

しかし、なにもロビーの受付でクーポン券を差し出すわけではない。ネット決済で千円オフになるだけだ。これを利用しない手はない。そう言い聞かせると、また旅の目標が決まった。

最後に筆者から

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沢木さんがホーチミン、そしてマジェスティックホテルに魅了されたのは、産経新聞の元サイゴン特派員だった近藤紘一さんの著作を眼にするようになってからだそうだ。近藤さんが産経新聞の社内留学生としてパリに赴く際、南回りの飛行機で最初にストップ・オーバーしたのがサイゴン、いわゆるホーチミンであり、泊まったホテルがマジェスティックだったそうだ。

その近藤さんに影響されてホーチミンを旅したのが沢木さんなら、沢木さんに影響されてホーチミンを旅する人がいる。旅は誰かに影響されてする旅もある。たとえ同じようなルートを辿るありきたりな旅でも、旅する人によって中身は全く異なるから旅は面白くて止められない。

沢木さんの旅はその後ホーチミンをあとにし、北のハノイまでを辿る。まさに本のタイトル『一号線を北上せよ』の旅となった。一方で、僕の旅は沢木さんのようにすべてバス移動ではなく、逆のルートで南下をしてホーチミンに来たが、同じような場所を辿れたんだなと嬉しく思った。これを、だからなんだと思う人もいるかもしれないが、旅は握ったら潰れるくらいの、ほんの小さな幸せが楽しくなると思っている。そして僕は沢木さんの『一号線を北上せよ』の旅とマジェスティックホテルに憧れていた。

次回のベトナム旅は、ホーチミンのマジェスティックホテルに泊まり、部屋はもちろんリバービュー。テラスバーではカクテルのミス・サイゴンを飲み、朝食は食堂のフォーを食べる。いいじゃないか。宿泊数は何泊にするか。1泊だけしたらブイビエン通りの安宿に移るか。いや、快適すぎて移れるのか不安になるが予算もある。

そっと目を閉じれば瞼の裏に浮かぶコロニアル調の外観。
あぁ、マジェスティックホテルに憧れて……。

マジェスティックホテル サイゴン
住所:1 Đồng Khởi, Bến Nghé, Hồ Chí Minh, ベトナム

たとえ泊まらなくても、ロビーの見学とテラスバーの利用が可能。タクシーのドアボーイが親切。マジェスティックオリジナルの地図を貰え、観光名所の案内もしてくれた。

 


◇マジェスティックホテル サイゴンの場所

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