ソウルのせんべろ大衆酒場|乙支路3街のビアホール「ノガリ横丁」でちょっとほろ酔い
ソウルで行ってみたい酒場があった。それは昔ながらの酒場だった。
名前は「ノガリ横丁」。
日本で昔ながらの酒場といえば大衆酒場を想像するが、ソウルなら乙支路3街(ウルチロサムガ)にあるビアホールということは知っていた。僕はソウル駅から地下鉄を乗り継いで、乙支路3街駅で降りた。
乙支路3街のビアホール
乙支路3街駅の3番出口から地上に出て、一本目の路地を右手に曲がると、見てそれと分かる酒場が姿を現した。この一帯はインテリアや水回り製品の専門店が集まっており、街の雰囲気を東京に例えると、神田鍛冶町の金物通りによく似ていた。
訪れた時間は18時過ぎ。各ビアホールの前では、仕事を終えた人々がビアジョッキ片手に楽しんでいる。客の年齢層は高めで、中年男性7割、若者男性2割、女性が1割といったところだろうか。そして観光客は誰一人としていなく、若干のアウェイ感がたまらない。
ところで韓国ではビアホールのことを「HOF(ホプ)」と呼ぶらしく、乙支路3街では1970年代末に独特のHOF文化が生まれたそうだ。そんなビアホール、HOFでビールを飲むのが今回の旅の目的でもあった。さらに店内で楽しむ真冬の季節ではなく、店外に並べられた椅子に腰を下ろし、ソウルの風を感じながら韓国ビールを飲む。ただそれだけをやってみたかった。
ビールとノガリクイ
幾つかあるビアホールのなかで、愛想の良いおばちゃんの店の席に腰を掛けてオーダーした。オーダーした品は、生ビールと焼き魚のような料理、ノガリクイという魚だ。せっかちな韓国人の気質にあわせたのか、ノガリクイはすぐに出てきた。
そのノガリクイは、真っ赤な唐辛子のタレやマヨネーズに付けて食べる。特に唐辛子のタレはとても辛く、否でも応でもビールがすすむ。そしてノガリクイの食感はとても固く、珍味や燻製のような感覚だ。これを手でちぎっては、時間をかけてしゃぶるように食べる。他に気の利いた料理は無いから、ほとんどのテーブルの光景はノガリクイとビールか韓国焼酎のソジュで一杯楽しむのだ。
◇メニューはシンプル。ビールは300円。ノガリクイは100円です。安いッ!
◇お通しのポップコーンとピーナッツは無料です
ノガリ横丁
ノガリクイが有名なことから、この通りは通称「ノガリ横丁」と呼ばれている。そしてノガリ横丁の元祖は「OBベオ」という、韓国ビールのOB直営ビアホールの名残り店なんだそうだ。韓国のレストランや食堂でビールを頼むと瓶ビールが主流だが、ジョッキの生ビールを楽しみたければ、ビアホールに足を運ぶことになる。韓国では定番だった。
東南アジアのような光景
ソウルのこの季節、日の入りの時間は遅い。20時前にやっと暗くなる頃、席は多くの客で埋まってきた。そんな路上の光景を見ていると、どこか親しみやすい光景に気づいた。
「そうだ。東南アジアのような光景だ」
プラスチック製の青いテーブルと赤い椅子。ここはタイかカンボジアか。これで椅子が低ければベトナムにも感じる。ソウルにもこのような場所があったんだ。僕はとても嬉しくなってしまい、ビールを5杯も飲んでしまった。それでも料金は1,500円。つまみのノガリクイを合わせても1,600円だ。
ここはまさにソウルのせんべろ。そして大好きな東南アジアのような雰囲気。一人で飲んでる客も観光客もいやしないが、とても満たされた気分で店をあとにした。
さて、もう一軒いきますか。
旅の途中
想いを噛みしめ
ノガリクイ
ノガリ横丁
アクセス:地下鉄2号線、3号線の乙支路3街駅3番出口。銀行を右手に見て直進して、一本目の路地を右折
料金:ジョッキ生ビール 3,000W、ノガリクイ 1,000W
メモ:メニューに日本語表記なし、地元向け店舗
◇ノガリ横丁の場所